I ~誰か...
―――楽曲制作をする際に季節感は意識されますか?
小松:ストーリーを展開していく時の重要なスパイスとして欠かせません。それにリリース日を聞いてから最終的な溝想を練ることが多いので、意識しなくてもかなりの比重で作品には盛り込まれてしまいますね。
前作「砂のしろ」の時とはまったく逆で、秋そのものをイメージしながら聴いて頂けると作品に入り込みやすいのではないかと思っています。秋が語ってくれる心情に、多くの言葉は必要ない…、という感じでしょうか。
―――この歌が生まれたのはどのような思いからですか?
小松:大切なものさえ守れない自分に、痛みを感じる資格や、生きてゆく意味があるのだろうか?と考え出すと礎さえ揺らいでしまって。生きていると格好悪いことの連続ですから、自暴自棄になって“誰か…”って叫びたくなる時もあります。
―――哀しげな詞とメロディーが相乗効果となって更に哀しさが募りますが、そのあたりは意図されましたか?
小松:今回も音に触発されて浮かんできた言葉を選びました。なのでなかなか説明しにくいのですが、過去に戻ってやり直したいと本気で思ってた時期に作ってましたので、そんな心理が大きく影響したかもしれません。
レコーディング前日からちょっと緊張しつつ、ドーナツのように膨らむヴォーカルをイメージして臨みました。高低差が激しくて、流れの静かな曲の時はいつもドキドキするのですが、意外とスンナリでホッとしましたけど。
―――歌の主人公に共鳴する部分も多い?
小松:一心同体ですね(笑)。心の温度が似ているような気がします。全部とまで言いませんが、やはり自分で見て聞いて触れたことじゃないと作品には反映されないみたいです。
―――新鮮だったのは私とあなた、僕と君といった1対1のつながりが描かれる歌が多くある中で、自分自身の存在理由を突き詰めていく今作の視点ですが、この視点で書くきっかけは何か?
小松:ここに居ない人に向かって後悔ばかりを歌っているからでしょうか。たぶんこんな心境を作品にしたことがなかったので、それが新鮮に感じてもらえる原因になっているのかもしれません。
―――タイトルに「I」と掲げたのはどうして?
小松:それでも私はこの先も私として生きてみたいと思っているからです。タイトルだけは希望をもって付けました(笑)。
―――”誰か ここに居る意味を教えて”とあるように、「自分は何者か」という問いを発している気がします。小松未歩さん自身「自分は何者か」という問いの答えは見えていますか?
小松:小学生のころからずっと考えているのですが、全然答えに辿り着けません。たぶん死んでも答えは出せないんでしょうね。それに「何者か?」に答えが出てしまうと、生きる気力をなくすかもしれませんし・・・。わからないほうがいいのかもしれません。