砂のしろ
ソフトラテン?という言葉があるなら、そんな感じをイメージしていました。熱いフレーズ満載でキツイ言葉を並べておいても、耳をくすぐる繊細な音が全体の熱を冷ましてくれるんじゃないかと感じたので、思い切って夏しました!
―――夏のにぎやかさと対比するように主人公の切ない気持ちが伝わってきますが?
小松:光が強いと影も濃いと言いますか、周りが楽しそうにしてると落ち込んでいる自分だけが1人取り残されたようで、いつもの倍、惨めだったりするんですよね。夏の休日は「楽しく過ごすもの」というDNAが人には組み込まれているようですけど、キラキラした場所に出向く気力がないときもあるんです。
―――真夏にあえてこういう心情を描こうと思われたきっかけは?
小松:完全に私の気分ですね(笑)。ウキウキする季節に身を置くと今は少しイタイかもしれません。後はアレンジを聴いたときに、心の底からフツフツと沸き返るものがあったので、そのままを心象風景としても描いてしまったようです。
―――小松未歩さん自身の”砂のしろ”のイメージとは?
小松:積み上げてきた気持ちや、重ねてきた時間です。どんな悲惨な経験をしても、無駄だと思うことってあまりなかったのですが、しなくてもいい経験もあるのかなと感じたことがこの言葉の始まりです。空を切るのではなくて、砂という手ごたえのあるものだっただけに余計辛く感じるのかもしれません。
―――感情的な楽曲や詞に反してヴォーカルは落ち着いた表情を見せていますが、これは意識してのこと?
小松:今回のレコーディングはいつも以上に声が出しやすくて、素直に歌えたということが最大の理由ですが、熱い音にクールなヴォーカルがこの曲を素敵にすると信じて、ただただ私の好みでそうしました。
海岸沿いの道をドライブしながら会話の発端になるような、2004年夏の景色と思い出と一緒に刻まれる1枚になればうれしいです。