さいごの砦
―――どういったイメージで作られた曲なのでしょうか?
小松:“自分の居場所探し”みたいな感じです。人生を歩むことにおいて「どこに向かうんだろう?」とか、目標をある地点に定めるとしたら「どうやればそこにたどり着くんだろう?」とか思いながらみんな生きていくと思うんですけど、それをひとつの恋愛に置いて作ってみようと思って。
ここでは別れた恋人への心の変化を描いていますが、人生を進むときだって同じだと思うんです。自分をなだめたり,すかしたり,迷いながら生きていく姿が世界中の到る所にあって,一度ダメになっても二度,三度,チャレンジできるし。それでもダメなら最初からリスタートを選ぶこともできる。その中で愛も夢も精一杯つかもうとしながら”さいごの砦”を守り、目指し,育んでいければって思ったんです。失敗や苦い経験も,そこに行きつくバネにできればもっと素敵な大人になれそうですし。
―――みんなが最終的に守り、目指し、育むところを"さいごの砦"という言葉していますが、この言葉はどこから出てきたのですか?
小松:なんか歌ってたらフッと出てきて(笑)。私も初めは"さいごの砦"って? "砦"って何だろう?って思ったんですけど、辞書を引いたら"攻撃を防ぐ小さなたてもの"とか書いてあって、なんだか素敵な言葉だなと思ったのがきっかけです。
"さいご"と言うと「これで終わり」みたいな感じに思いがちですけど"さいごの砦"となるとそうじゃなくて結構、前向きで明るい意味なんですよね。ここでは自分の核となる部分、守り抜きたいものという感じです。
―――「人生は一度ダメになってもチャレンジ出来る」「最初からリスタート出来る」と言われましたが、そういう考えは今回たまたま出てきたところなんですか?
小松:最近、自分の中でだいぶ考え方が変わってきているみたいなんです。意識はないのですが、知らない自分がどんどん出てくる感じ。今までの私なら、別れた恋人が目の前に現れて、揺れたりする人の気持ちなんて全然わからなかった。それに一回壊れてしまったらもうアプローチする方法はないとも思っていたし。でも、こんな詞を書くようになったということは、ちゃんと消化しきれてる感情だからこそ歌えるんだと思いますし、確実に新しい自分がこの作品には出ている気がします。
―――考え方が変わったきっかけというのは何か?
小松:優しくなったのかなぁ(笑)。きっかけ...なんでしょうね? 最近感じたことは、自分のことは見えないけど、人の失敗ってよく見えるじゃないですか(笑)。で、「あっ大変そう」とか私は思ってるんですけど、次の瞬間、普通に立ち直ってまた新しいことに挑戦してたり、同じことをやっててもグレードアップして楽しそうにやってたりするんですよね。そうすると今度は反対に人のしていることが輝いて見えたりすることってあるじゃないですか。そう思うと人生ってやっぱり一辺倒じゃないんだなって、いつでも挽回できるということが実際に実感できたりしたからかもしれないですよね。白と黒だけじゃないことも許せるようになった感じです(笑)。
この曲はなるべくメロディーの勢いを壊さないように歌おうと思って。詞が全然入ってこなくても、曲の心地よさで思わず口ずさめるような詞の乗せ方にしたいなぁって思ったんです。
今回はマイク選びのために8本分も歌ったんですよ(笑)。その中から柔らかく聴けてくるんだけれども、低音が響くものを選ばせてもらって。今回はキンキンしてしまうよりは、どっちかって言うと奥まった感じで下にずっしりくるものを選んだんです。自分の声も、声自体はいつも通り1音1音にウエイトを置いて歌いましたが、どちらかというとリズム感を重視してたので・・・。