小松未歩5 ~source~
今回は詞だけじゃなくて音でもストーリーを作れたらいいなぁと思ったので、アルバム全体の流れについて今まで以上にこだわってみました。つま先だっていない飾らない心を感じられる正直な表現は“心掛けた”というよりも自然に生まれてきたもの。1回聴いたらもう1回とアルバム全体の流れにどっぷりと浸ってもらえると嬉しいですね。“頬をくすぐるキラキラとした風が吹いている”そんな印象を受ける心地よいサウンドに乗せた、湧き上がってくるままのメロディーや思いをどのように受け止めてもらえるのか、今からもうドキドキです。
―――sourceというタイトルについて
小松:いろいろな気持ちやメロディーが湧き上がってくる源には、いつも居てくれる“あなた”という存在の大きさを強く感じたのでこのタイトルにしました。支えてくださる方たちや影響を与えてくれるみんなと一緒に作ったアルバムという想いは、ひとりよがりではないような気がしています。
―――4thアルバム「A thousand feelings」で「いろんなものをくれた周りの人たちにリボンをかけて届けるようなイメージ」と言われていましたが、対“あなた”となるとそれより近い距離感になった感じですか?
小松:4thアルバムあたりからのそういった気持ちは、この5thにもかなり反映されていきました。4thでは言い尽くせなかったことも自分の中ではたくさんあったようで、このアルバムの完成まで気持ちがまったく途切れなかった。今回は「こんな気持ちありませんか」と話しかけているところを見ると、前回より成長した自分を垣間見られる出来栄えかなとは思っています。みんなからもらったものがすぐインスピレーションとして湧き出るようになったお陰で、より早い段階の私を作品として表せたのが近さを感じさせる要因になっているんだと思います。
“今の私”を表現していることに変わりはありませんが、以前は「こんな歌を歌いたい」という具体的な理想があって、それを追及していたので今とはリアルさの種類が違うんだと思います。ほんと今はついさっきの出来事がフッと浮かんできたら、明日歌ってるくらいの勢いでいますからね(笑)。みんなで作っているアルバムなんだとこんなところからも実感できます。
小松:今回もメロディーやアレンジからのイメージをそのまま描いていったのですが、世界観に少し変化があったかなとは感じています。対象のいない歌でもスラスラと思いが綴れたり・・・本来はあまり得意な分野じゃなかったのですが。
―――なぜそうなってきたのかわかりますか?
小松:ず~っと歩んできた道がそうさせるんだと思います(笑)。たぶん自分の中では4thアルバムのときから歌わなきゃって感じてたとは思うんですけど自分のものになってなかったというか、噛み砕けてなかったというか、あの時は上手に表現できなかった。でも今やっと自然に心から歌えたようなそんな気がしています。
サウンド面で、より一貫性を持たせてみようと思いながらまとめていきました。キラキラとした一定の心地良い風みたいなのを感じてもらえたら嬉しいですね。
私も聴いてて1曲1曲のあまりの景色の違いに、ちゃんとまとまるのか心配でしたけど(笑)、そのキラキラとした風がいい感じに1枚をまとめてくれているような気がするんです。その風の正体が何なのかはわからないんですけど、曲とは違う時空をキラキラリンと吹いているようで(笑)。長とピーターパンのティンカーベルをイメージしてもらえるといいのかなぁ。シュ~ってメロディーに魔法をかけると、浄化されたように遠い思い出として全部がキラキラと輝きだす感じが私には心地良くて。
いつも心がけていることはどの曲も変わらず、温かい音色と詞に合うコード感などなど・・・。個々にこだわった音を入れ込んだとしても、そこには一体感みたいなものは生まれてくるのかもしれません。
最終的には出来上がった作品が自分の中で心地良ければ、どんなものでもそれで満足なんですけどね(笑)。もちろん全部同じに聴こえちゃイヤですけど。
―――今回の曲順は結構考えられたんですか?
小松:そうですね、集中して1時間ぐらい(笑)。これしかないっていうのが自分の中で出来たら全然迷いませんでした。
核になっている曲ですか? たぶん「とどまることのない愛」でしょうね。5thアルバムへの第一歩がこの曲でしたから。レコーディング全体としては、前半の音決めの段階で難航したのでそのときはさすがにハラハラしましたが、声の伸びもいつもより良く(笑)、脱兎の勢いで後半を走り抜けられ、終わってみれば思いのほかスンナリだったようには感じています。その中でもギターが前面に聴こえてくる「style of my own」はデモのときのコード感をどうしても再現したくて、アレンジに一番時間を費やした曲です。苦戦といえば「でも忘れない」かな。ピアノで作曲したのでいざ歌ってみると息継ぎの場所がなくて(笑)。
―――「gift」を1曲目に選んだことについて
小松:やっぱり今一番自分の中で比重の大きい想いを最初に聴いてもらいたかった。それにアレンジャーさんを含めスタッフから愛されてる曲だという喜びも分かち合いたいと思いましたし。この曲から始まるアルバム「source」はイメージが2倍にも3倍にも膨らんでくれるように感じます。
―――今、言われた、一番言いたかったっていうのは具体的にどういう?
小松:すべてに意味があるというか「無駄」とか「遠回り」だと思っていても、それはいつか必ず必要だったんだと思える日が来るからみたいな...。う~ん、一寸の虫にも五分の魂とか(笑)。今までもそういう気持ちはあったのですが、上手に歌えなかったんです、周りの環境にこんな優しい気持ちをもらえた感動と、それを表現できたことへの感謝は最初じゃなければいけないような気がしました。
たくさんの気持ちやメロディーへの影響をもらえたり、私も何かを発信していたりの、贈ったり贈られたりもそうですし、あと命とかこの世のすべてのものは神様からの贈り物ということで“gift”というらしいんです。なのでいらないものなんてないっていう言葉の象徴にはぴったりだなと思えてならなくて。
感情のなさそうな無機質なものでさえも、何かの役に立つためにココに存在しているというパワーを発揮してきたら、私も全力投球しない限りどんなものにもかなわない気がするんです。目指すものがあるのなら引き下がらずにつかみ取るまで戦う!くらいの覚悟は必要かなぁ。
―――「愛」とつく楽曲が3曲収録されていますが・・・?
小松:あらゆるものの核は愛でできていると思う私にとっては文字にして表さなくても、どこかで愛を感じてもらえる歌を作っていきたいと思っています。これまでも、これからも変わらずに・・・。
アルバムの中でも最後の方に出来上がった「style of my own」と「gift」は対象のいない自問自答のような内容になっています。何もない私だけどこんな状況を楽しめる自身を頼もしいと思えたり、ちっぽけな自分が言うのも何なんですが調和を取りながら生きて生きたいと語っている大きな独り言は、まさに今の心情そのもの。
人を好きになったり誰かを思いやる心は、自分を大切だと思わないと生まれてこない気持ちだと感じています。それに自分に自信がないと助言もしてあげられないし、相手にも優しくできて強くしっかりとした自分でいられることが今の私の理想です(笑)。
―――4枚目5枚目と来て、そういうところがどんどん見えてきてる?
小松:そういう時期なんでしょうね。そしてこういう気持ちをちゃんと表せるようになったっていうのがたぶん5枚目。
言いたいことは山ほどあって、頑張って表現しようとはしているのですが、まだまだ未熟なようで...(笑)。本音には知られたくない暗い部分も見え隠れしますが、今回はキラキラとした風に助けられて、あまりきつくは聴こえませんね。
―――今回は小松さんにとって今までとは違う意味のある作品になったのでは?と思いますが。
小松:そうなるといいですね。このアルバムで”沸いて出てきた気持ち”が、これからの活動を通じて”流れ出せるように”変わっていければいいなと思っています。
―――それは小松さん自身も変わってきてるんですか?
小松:もちろん変わったと思いますよ。例えばあまり怒らなくなりました(笑)。「これじゃなきゃダメ」っていうような考え方をしなくなったからでしょうね。器用ではありませんが生きる術といいますか。世の中にあるすべてのものはいつか壊れてしまうでしょ。それによって打ちひしがれるほどの悲しみに見舞われることもあるけど、受け止めてまた立て直そうとする強さも持っている。。そんな喜怒哀楽をちゃんと感じられるニュートラルな心でなければ、またダメだとも思いますしね。考えるときの優先順位が変わったのかな。
私に息吹をもたらしてくれるまわりにあるすべてのものと、同じ空間を共有できたらいいなぁ。