INTERVIEW


dance

失ってはじめて気づく存在の大きさ。こんなにも2人の心は遠く離れていたなんて。そばにいたのに全く気づけずハンパな気持ちで毎日を過ごしていた罰はとてつもなく大きな痛手となって跳ね返ってきました。「dance」は私なりに考えた別れの受け入れ方・大人編です。本来なら悲しいとき、思いっきり騒いで泣いて忘れてしまおう主義の楽天家が立たされた新境地。またひとつ知らなかった心情が響きます。


―――「dance」は今までの小松未歩さんの作品とは雰囲気が違って驚かされたのですが、デビュー5周年ということで、やはりそういった節目的な気持ちも今作にはあったんですか?

小松:節目だからみたいなところを意識はしてなかったと思います。特筆するほどの心境の変化もありませんでしたし・・・。いつものように曲を聴いてパッと浮かんだ情景をしたためたという感じです。


―――具体的なシチュエーションが出てきますね?

小松:結構、想像の世界だったり(笑)。よく「踊って、ストレス発散できました」とか耳にしますけど、私にはない発想というか、憧れる行動というか・・・たぶん私は踊りに行ってもストレスは発散できないでしょうから。でも理屈して、寂しいときや人肌恋しいとき、人が大勢集まるところへ行きたかったり、明るいネオンがあったらちょっと安心するみたいな気持ちは理解できるので、そんなところから膨らませて歌っています。


―――曲を作ったときから、寂しさを人の中で紛らわせるようなイメージはあったんですか?

小松:そうですね。作曲時から夜の繁華街にたたずむ人・孤独みたいなことを連想していましたから、アレンジされたものを聴いて、改めてこの曲の行く末を確信出来た感じです。違和感なくこの詞を綴っていけました。


―――いつもは恋愛の何気ないシーンの中から小さな感情を共感できる言葉にしてくれる歌詞が多いんですが、今回はその情景がすごく具体的で、意外でした。

小松:えぇっ?! みなさんが思う小松像から逸脱し過ぎましたでしょうか? 私自身は変わったこともなく、いつものように制作していたので、どこがどう違うのかわからないのですが・・・。ちょっと不安。

―――例えば、今回はなぜ自分にはない感情や自分は行かない場所を、想像しながら書くという方向に行ったのかなって。

小松:確かにあまりなじみのない場所を舞台にして描いてますので、自分自身でも頭の中はクエスチョンマークが飛んでいます(笑)、背伸びしちゃったかなって。でも無理に悲しみを忘れようとして大人びた、背伸びした行動をとってしまう愚かしさみたいなところは、この曲の主人公と重なるかなって。今までもすべての作品がまるまる実体験というわけではなく、憧れや願望などを盛り込んで作っていましたので、特別に今回から変わってしまったという意識はほんとなかったんですけどね。


小松:この“dance”は文字通りの踊ると、気持ちが高揚するの躍るとの両方をかけています。実際に髪を振り乱して踊ったというよりは、自暴自棄になったときの行動を描写するときの私なりの世界観といいますか・・・。

―――そうやっていろいろ想像するのは楽しいですよね?

小松:ほんと想像力がなくなったら生きていけないかも(笑)。それくらい楽しい。でも大袈裟な表現だとは全然思っていなくて、想像力ってやっぱり大切ですよ。「あ~なったらいいな、こ~したらどうなるんだろう」ってことが、あっと驚く発明品を生んだりするわけですから。そんなこと考えてるだけでウキウキ、ワクワクしてきますし。今日を生きる糧と言っても過言ではありません。まぁ、現実逃避という説もありますが(笑)。


―――歌詞には悲しさ寂しさを雑踏の中で紛らわせたいということですが、雑踏に憧れるところは未歩さんにもありますか?

小松:私だったら一目散に雑踏から逃れたい(笑)。でも“dance”の主人公のように発散できたらいいなとは思います。これは私のイメージの中では大人の世界なので、いつかは私もこんな風に過ごせるのかなって。


この曲もピアノの鍵盤遊びの一端からできたのですが、言葉数の多いメロディーを意識して作りました。


いつものようにマイクを何本か試して、響き合うものを使用しました。でも歌入れはちょっと苦労したかな。強弱が出てしまって、なんだか別人だったんです、(笑)。何回も歌ってエンジニアさんとも相談して・・・と最近にはないくらい難航しました。


―――デビューから5年ですが、自分の歌を客観的に聴けたりしますか?

小松:客観的かどうかはわかりませんが、小松らしさみたいなものは失わないようにというのがデビュー当時から心掛けていることです。それを言葉では表現できないんですけど・・・。自分で良いと思うテイクを決める作業は大変ですが、制作の中で一番のメインですから気合の入れようも格別です。

僕らの行方

―――こちらは現代に向けてのメッセージ性を含んだ深みのある歌になっていますが?

小松:アレンジされたものを聴いたときは寂しい曲になるのかなと思ったんですけど、描いていくうちにじんわり力強い雰囲気が出たように思います。あえてメッセージ性を押し出したつもりはなかったのですが、そんな風に響いてくれたのはうれしいことです。


この曲は、世界がどんな状況にあっても1人1人の根底に流れているものが、“愛”であればいいなというのが最大のテーマ。それはずっと私の作品の中核となっているところでもありますので、まさしく私の中に合ったということになりますね。


最近は普通に生活していても目を覆いたくなるようなニュースが毎日のように飛び込んできますから、知らず知らずのうちに影響を受けてしまうだろうなとは思っていました。愛する人を守り抜くことすらままならない時代だということは誰しもが感じていることですし。でもこの時期に“僕らの行方”でこの世界を描くとは予想していませんでしたけど・・・。世間で起こっていることは複雑すぎてわからないことが多いのですが、自分なりにちゃんと意見は言えるようにしておくのも社会人としてのたしなみだと思えるようになりました。


―――小松未歩さんのメッセージとしては、そんな中でも希望を忘れずに生きていこう、というところになりますか?

小松:そうですね。想像力がなくなったら生きていけないのと同じで、小さな希望でも失ってしまったら暮らしていけないと思っていますから。私は家族やかけがえのない存在のために輝く未来を実現させたいって奮闘していきたい。それなら目標として向かうところがキラキラと輝いている方が、単純な私は頑張れそうなので(笑)。